今日、ご紹介する事例は退職者の本音です。
「ちょっとお時間よろしいですか?」
ドキッとする瞬間ですよね。そして悪い予感は当たります。
退職の申し出です。
「どうして?」「なぜ?」
色々な聞き方をされると思いますが、釈然としないまま退職を了承するしかない状況ではありませんか?
今回は退職希望者の本音が分かったことで社内環境を見直すきっかけを作れた事例を紹介します。
それでは、早速事例を見ていきましょう。
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Aさんは入社2年目。仕事もきっちりやってくれている。問題を起こしたこともない。上司や社長からの信頼も厚く、2年目にはリーダー業務も任されていました。
これからの成長がますます期待されていた。
まさにそんなときに事件は起こりました。
「Aさんが退職したいと言ってきた」
と慌てた社長から私に連絡がありました。
「理由は何か言っていましたか?」
「それが実家に帰りたいって。それしか言わないんだよ」
社長はその退職理由に釈然としていていない様子でした。
私は退職を申し出たAさんと面談をすることになりました。もちろん本当の退職理由を知るためです。
本当のことを聞きたいとき、面談対象者と面談者の間に利害関係がない方がベストです。
社長や上司といった会社の仲間に打ち明けにくいことでも利害関係のない部外者だと話してくれることがあります。
そして、話を聞くときは絶対に相手の思いや考えを否定しないことも重要です。
「あぁ、この人は理解してくれないんだ」
と少しでも思われたら口を閉ざしてしまいます。
でも、ついつい、言ってしまいますよね。
「いや、でもね・・・」
「わかるけど、でも・・・」
と。でも本音を聞きたいときはグッと我慢です。
相手の思いや考えを一旦全面的に受け取って本音を話してもらえるように信頼関係を作ることに集中します。
面談開始時もAさんは退職の理由を「地元に帰りたいから」と話していました。
「なぜ地元に帰りたくなったの?」と尋ねると、「両親が帰っておいでと言っている」と返ってきます。
Aさんの話を全面的に受け止めて信頼関係を作りながら、頃合いを見て、「ひょっとしてAさんの気持ちの中に地元に帰りたくなった理由があるんじゃないのかな?」と切り込んでみました。
すると、
「仕事がきついんです・・・」
か細い声で、下を向きながら言ってくれました。
「どんなところがきつかった?」と聞くと、「私は、仕事は仕事、プライベートはプライベートで分けたい。だけどリーダーになってからその境目がないんです」と。
この会社では、リーダーや管理職には常に会社の状況が通知されるようになっています。
それが仕事とプライベートをしっかり分けたいAさんにとっては負担だったようです。
後日、社長に面談結果をお伝えしました。
社内ルールを変更すれば退職を思いとどまる可能性もあることを伝えました。
社長もAさんの本音と向き合いました。
考え抜いた結果、社長は社内ルールを一部変更することにしました。
Aさんは今も働いています。
ただし社内ルールは一部変更になっただけなのでAさんの負担感は完全になくなっているわけではありません。まだ退職の気持ちは持っているようです。
ただ、自分が負担に感じていることを少しでも軽減しようとしてくれた会社の姿勢には感謝していました。
社長もAさんの退職理由を「実家に帰る」と聞いていた時は何か釈然としないものを感じていましたが本音を知った今は納得感が全然違います。
社長はAさんの本音を知ってから、これからどんな組織を作っていきたいのかを一旦立ち止まって考えることができたと言われていました。
もし退職になったとしても、会社としてできることをやった上でそれでも会社のやり方が合わないのであれば仕方がないと思えると話されていました。
そもそも、社員は社長や上司に本音は言いにくいというのがあります。それは先ほども述べたように、どうしても利害関係があるからです。
本音を話すことで不利益があるかもと、社員さんは考えてしいます。だから退職理由は建前であることがほとんどです。本当の理由はなかなかわかりません。
しかし、今回のケースのように本音がわかることで他の方法がないかを経営者も納得するまで模索することができます。
今後同じ理由で退職希望者が出ないように社内ルールや社員教育に工夫をこらしていくこともできます。
実は先日もAさんと面談をしました。
今後のキャリア選択の役に立てばと、
“仕事で大切にしたい価値観”について話し合いました。
どんな職場でも輝かれることを願っています。
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いかがでしたでしょうか?
本当の退職理由を知ることで採用や社内ルールを強くする気づきを得ることができます。
もちろん、退職を思いとどまらせることができる場合もあります。
退職の希望が出たときにまず利害関係が薄い方を面談に選ぶといいでしょう。
他部署の先輩や、社長ではなく総務の方など。
具体的な対応策が見つからないときは橋口にぜひご相談ください。
解決策を一緒に考えていきます。