チーム全員が肥満に?!
解決の糸口は“働き方改革”にあった
〜健康診断から見えたチームの課題と働き方改革の成功事例〜
健康診断の結果を分析して、健康的な生活が送れるようにアドバイスすることも、保健師の重要な役割の一つです。
そして今日、取り上げるのは肥満です。
嫌な言葉ですよね…。私も嫌です…。
しかし40歳を超えると健康診断の結果で一番多いのが「肥満気味」というやつです。
厚生労働省によると『40歳以上ではおよそ4割の人が肥満気味である』というデータもあります。
(あなたはどうですか?小声)
肥満は、
- 食べ過ぎ
- 飲み過ぎ
- 運動不足
が原因とよく言われています。
だから、部下や夫が肥満気味という結果を持って帰ってくると食べるな、飲むな、動け!とアドバイスをされている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これが会社の“働き方”で肥満気味になっているとしたらどうでしょうか?
つまり会社が原因で肥満を引き起こしている可能性です。
その場合は、運動しろ!食べすぎるな!
だけでは解決しにくいですよね。
むしろ根本原因に着手しなくては本質的な解決ができません。
今日の事例は全員が肥満気味と健康診断で言われたとある営業チーム(チームD)の話。しかも加齢とは関係なく、若い社員が配属されたとしても全員が肥満になる。まさに肥満を生み出す環境が作られていたチームでした。
今日はそのメカニズムと解決策をお伝えします。
課題:長時間労働と不規則な生活習慣
まずは個別面談を通じてメンバーの生活状況や働き方を確認します。
まずは原因を突き止める。
そのために面談で様子を探っていきます。
その結果、以下の問題が明らかになって来ました。
- チームDの主要顧客は、勤務終了後でなければ連絡に応じてくれないため、慢性的な長時間労働が発生していた。
- その結果、夕食が23時以降になることが常態化し、睡眠時間が短縮される生活パターンに陥っていた。
これが1人ではなくチーム全員に共通することでした。つまりこれらの生活習慣が、肥満度の増加に関係している可能性が高いと私は考えました。
対応策:具体的な改善提案と行動
遅い時間の夕食と短い睡眠時間が肥満に繋がっていそうだったので、チームDの上長や人事部に以下のいずれかで改善の取り組みを行わないか提案しました。
- 勤務開始時間を遅らせ、睡眠時間を確保できるようにする
- 19時に30分間の休憩を設け、その時間に夕食を摂る
- 顧客と交渉し、勤務時間内でのやり取りを実現する
協議の結果、③の「顧客との交渉」を実施することになりました。
人事部と上長が顧客に状況を説明し、勤務時間内でやり取りを行えるよう交渉したところ、顧客側からの合意を得ることができました。
成果:働き方改革がもたらした変化
顧客との合意後、チームDの長時間労働は大幅に削減され、生活パターンにも改善が見られるようになりました。今まで仕事に使っていた時間にジムに行くようになった社員がいたり、車通勤から自転車通勤に帰る社員が出始めました。肥満は長年の生活習慣の積み重ねなので、すぐに結果に繋がるわけではありません。
ですが、少しずつ改善の兆しが見られるようになりました。肥満もですが、生活リズムが整ったことで社員の表情にも余裕が出てきて笑顔が増えたことも印象的でした。
さらに驚いたのが、チームDのメンバーと顧客で山登りに行ったりするようになったりしていたことでした。“顧客側”の働き方も改善され、顧客とチームDメンバーとの関係も良くなったようです。上長もこんなに副産物があるのかと驚いていました。
学び:組織的課題を解決するためのアプローチ
この事例から得られる教訓は、健康診断のデータが個人の健康だけを表しているわけではないということです。チームや組織の働き方の課題を浮き彫りにする可能性もあります。
個人だけで見た場合、社内での指導方法は”食事、飲酒、運動”といったところにいきがちです。そして個人の努力に解決を求めてしまいます。
しかし、集団で共通の課題がある場合は、仕組みや制度を見直すことで根本的な解決に繋がることが多々あります。
保健師は1人を見つつも、組織全体にその原因がないかを常に並行して考えています。
病欠者が続く場合や、健康診断の結果がよくない人が多い部署、部門などがある場合は、組織的な原因が隠れている可能性があります。
もしあなたの会社でも気になることがありましたらぜひ橋口までご相談ください。